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血潮吹く感傷と100万回死ぬ言葉。 無間書房は、火の国熊本発の文芸同人サークルです。
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「うっ、うう」
――やあこれはこれは有難う。
「うっ」
ーープリントを回してくれたのかい。
「ひゅっ」
ーーきみ、何学部の学生。
「あああ」
ーー今度ゆっくり、どこかへ。
心の中では、きちんと話せた。
『Lapislazuli 紫熊号』新人号 より
僕は、小説の中の主人公をヒーローにしてしまいがちです。それがどんな人間であろうとも、「深く考える一人称主体」としてその人物を捉えるとき、それが物語世界で最も上位にいると錯覚してしまうのです。
しかし、「瓦解者」では突如としてこの「コミュ症」とか「キモオタ」とでも名付けられそうな主人公の外面を描くことによって、主人公を一気に相対化し、下位に引きずり下ろすことに成功しているように思います。(これを「成功」と呼ぶのかどうかは、個々人によるのでしょうが…)。
ラストシーン、猫に自分を転化するのも世界観にマッチしていて良かったと思います。僕はあまり読んでいないのですが、筒井康隆や安部公房を思い出しました。
唯一欠点を挙げるとすれば、単語の使い方のぶれでしょうか。
主人公は「キモオタ的」だけれど、内面はなんというか海外文学にかぶれているような感じがします。その雰囲気を全体的に出しつつ、現代っぽさも演出しているのに、どうしてか突如として投げやりになっているような単語選びが感じられました。とはいえ、大した欠点ではないように思います。
並んで立つ二本のイチョウのお話。童話っぽい。英語の教科書で読んだ「葉っぱのフレディ」を思い出しました。
「主人公が人間以外」の物語というのは、人間として生きている僕らにとっては非常に新鮮なものです。しかし、上に挙げた「葉っぱのフレディ」をはじめとして様々な「主人公が人間以外」の物語があるので、そことどう差別化(というのが適当かは分かりませんが)していく必要があると思います。
さて、この物語の感動ポイントを勝手に探したのですが、「ギンナンは踏まれ、葉っぱは散って悲しい」「桜への妬み」「憂鬱な秋に寂しそうに呼ばれた(ような気がした)」というあたりでしょうか。
作中では「秋の季節は憂鬱である」と二回繰り返された後で「秋が終わるのだ」と独白が続き、最後の一文は「秋の声が、寂しそうに私を呼んだ気がした」と綴られます。この辺りの描写は、非常に綺麗でいいじゃありませんか。
ところで、僕にはこのイチョウの桜に対する妬みは筋違いであるように思われます。イチョウは、葉っぱが散る――死ぬ――姿を見て「憂鬱」だと言い、いずれ綺麗に咲き誇る桜を見て「憂鬱」だと言います。
しかし、桜も花を散らすのだし、秋は地味な葉っぱを付けているだけの桜からしてみれば、鮮やかな黄色に染まるイチョウの気は羨望(あるいは妬み)の対象であるはずなのです。作者が意図しているのかどうかはわかりませんが、イチョウたちはその点に気づいていません。これで「秋の声」に「寂しく呼」ばれたような気がしたなんて、お前は何を言っているんだ目を覚ませというところなのです。
というところに気づくまでを作品に取り入れても良いなと思ったのですが、そんな無批判なイチョウたちを描いて「秋の声が、寂しそうに私を呼んだ気がした」の方が数倍も奥行があって良いなあと考え直しました。
ただ、童話チックな話が好きな人であればこの作品も大好きなのですが、もっとドロドロした話が好きな僕としては、「童話チック」という枠の中でもう少し踏み込んだものを書くと、「お、あっちの畑にすげえものが生ってるぞ!!」となるかなあとも思いました。ぜひ、「木」を主人公にしてもう一本。
そういえば、「こだま」というタイトルに注目するのを忘れていたのですが、まあ頑張ってここまで書いたので他の方の批評にお任せしたいと思います…(ごめんなさい)。
無間書房ブログなので少し過激なことを書くかもしれないのですが、この作品は非常に面白く読めたので、そのことを念頭に置きながら読んでいただけると幸いです。
この作品を読みながら、「ソフレ? 付き合ってるのにソフレなの? こいつらたぶんキスもまだだよね? それでソフレ? ソフレなの???」と考えていました。
人物の作り方は、非常にラノベ的だなと思いました(この間、四話まで見たアニメ版禁書目録を思い出しながら)。正義感は強そうだけれどちょっと気だるげな主人公。終始ぴょんぴょんしてて可愛い彼女。先入観強すぎてイメージを増幅させているような気がしなくもないのですが、だいたいこんなイメージで読みました。
エロ同人とかなら「眠る日」を楽しんでいるのにいつの間にか…みたいな展開になるのですが、その辺りは節度が守られていて非常に良いなと思いました。まあ、個人的な趣味としてはソフレ脱出の方に進むのも良いと思うのですが、この二人とこの文体だと、エロ同人への道を突き進むことになりそうなので、このままがベストだと思います。
なんか『陽だまりの彼女』とかを読んでいるようで、僕は街中でこのいちゃつき方をしているカップルを見つけたら端から火をつけて回りたい感じなのですが、とりあえず幸来ちゃんかわいいのでお嫁にください。
また中尾くんかよ!!!!! と思いながら読みました。
二作読んで思うのですが、中尾くんは人間の内側と外側を書きわけるのがうまいし、そういう点を強く意識しているんじゃないでしょうか。
殺人の犯人に夢の中で乗り移ってしまうという設定は非常に面白かったです。
同じ人の作品を二作も連続で批評するのは少し疲れるので、あと少しだけ。
中尾くんは文章も非常にうまいと思うし、話の設定も面白いのだけど、話の設定にどこか「借り物感」があるように思います。もちろん世の中には似ている作品というものが多数存在しているので、「あの作品に似てる!」ということは小説読んでてたくさん起こります。しかし、やはりこの作品はどこか「借り物である」と感じました。うまく言語化できなくてごめんなさい…。
しかし、中尾くんはこのまま文章を書き続ければ、どんどん成長していくのだろうと思います。非常に多作なようですが、一作に時間をかけてみても良いのかも? スタイルはそれぞれなので口出しするようなことでもありませんが。とにかく、これからの作品に期待しております!
浅学ゆえに名前の読み方が全然わからないので、今度会ったら教えてください。
すごく単純化すると、人格者の才女が、いじめにあうことで厨二的人格を発現してしまう話です。あと、確実にグロテスク枠。これだけ血だらけになって帰って、家の人はどう思っているのだろうかといらぬ心配をしてしまいました。
ジョギングをしているシーンからいきなり非日常的な空間に移る描写も良いし、彼女が叫ぶ言葉も非常によく作りこまれているなと思いました。
ただ、個人的な感想としては、もう少し「正常」な朔夜の描写があれば良かったかなと思うところです。「異常」な朔夜こそがこの作品の描きたかったものだと思うので、そこを作り込むのはもちろん正解だし、その試みはとても成功しているでしょう。
ただ、「異常」は「正常」との相対的な距離によって、よりその「異常」性が際立つのではないかと思います。朔夜が「異常」であるということは描写からよくわかるけれど、朔夜の「正常」な人格者かつ才女という面は、ただ「情報」としてしか読者に与えられていません。その「正常」を描写し、そこにどんな仕打ちが施されて「異常」になったのか。そのプロセスを描くことも重要であるような気もします。
「博士の愛した数式じゃん!」「掟上今日子の備忘録じゃん!」「とある魔術の禁書目録じゃん!(再登場)」という意見が出てきそうだな、というか僕がそう思ったのですが、作者がその作品を知っていたか知っていなかったかは別として、それとどう差別化されているのかというのが大事なので、強く生きましょう(自分の作品が○○に似てると言われたときのことを思い出しながら)。
で、そういう前提で読んだときに、この設定で書くのはとても大変だよなと思いました。僕らは、前日の記憶がないなんてことを経験したことがないので、整合性を楽しむのがとても難しそうです(まあ、誰も経験したことがないので整合性に対していくらでも言い訳できる、という考え方もできそうですが)。
まあ、「記憶」に関すること以外は博士も掟上も禁書目録も全然関係ない仕上がりになっているし、二人の関係は普通に綺麗に描けているし、破綻もなさそうだし、うまくまとまっていると思います。また、筆力は十分なので、あとはどれだけうまく発想できるかが勝負だと思います。
とても長くてとても場面転換が多くてとても会話文が多かったのですが、それがこの作品のいいところだと思いました。ただ、ですます調にするとアクションシーンの臨場感が死んじゃうかもしれません。不気味な感じがして、これはこれで良かったですけども。
爆破できるならさっさと田中所長のことを爆破しろよと思わなくもなかったのですが、田中さんが田中所長の頭を握りつぶすシーンがないとこの物語のいいところを損ねてしまうなぐぬぬと思い、脳みそから触手が生えてくるってどういうことだよと思い、まあ他にも色々なことを思ったのですが、個人的には長い作品は最初に持っていてだけると良いなと思いました(あくまで個人的に)。
読者が、ある物語から愛を感じれば、それは純文学だと思います(さくや)
あまり読まないからか固そうで近寄りがたい。
表紙が写真なのが多い印象。
なんとなくでてを出したら叱られそう。
作者が高学歴そう。(ライトな読者)
意味深とみせかけて結局セクシャルな問題に還元するジャンル(ぼっちほっち)
教養そのものと、他人の人生を体験できるもの
難解で抽象的、刹那的な人物が出てくる文学。(かの)
作者の知名度やメディアミックスに頼らず、本の内容のみで多くの世代から支持を得た作品。文章のみで上り詰めた作品。(饅頭)
ホラー、ミステリー、サスペンス、アクション、パロディ、SF、ファンタジー、官能、冒険などいろんなジャンルがあるけれど、がっつりそれに当てはまらない。偏らない。血わき肉踊らない。…気がしています。(MaKI)
100年経っても生き残り愛され色褪せない作品。(なおと)
キャラクターや、構成を重視した小説ではなく、何か強い意志をその話に盛り込んだ小説、と思っています。(キジ)
純文学とは、一筋縄ではいかない精神を書き表していると思う。(治子)
言葉の蛇足を極限まで薄めたもの。(作家の卵の殻の欠片)