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無間書房

血潮吹く感傷と100万回死ぬ言葉。 無間書房は、火の国熊本発の文芸同人サークルです。

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140字小説の可能性

140字小説というもの

無間書房では、ここ数日「140字小説」という新たな試みをしている。

140字小説というのは、文字通りTwitterの字数制限である140字以内で物語を書くことである。同じような試みはTwitter黎明期から存在するようで、僕もしばしばTLに流れてくる作品を目にしてきた。「#twinovel」というハッシュタグもあり、ここから様々な140字小説を読むことができる。

僕のフォロワーにもやっている人は結構いて、なんだか面白そうだなあと眺めていたのだけれど、ついぞ手を出すことが無かった。そんな僕が140字小説に可能性を見出したきっかけを与えてくれたのが、ほしおさなえさんの140字小説だ。

彼女はTwitterで140字小説を発表したり、現代美術家の大槻香奈さんとのコラボで「140字小説活版カード」を出したりしている。それまでの僕は、140字で小説を書くということを単なる遊び程度にしか考えていなかったけれど、ほしおさんの作品を読んでそのイメージが一変した。彼女の創り出す、詩的情緒溢れる物語世界に魅了されてしまったのだ。

140字小説の利点は恐らく、小説を書いても詩を書いても何も言われないところにあると思う。がっつりストーリーを構築しても良いし、ふわふわと抽象的・詩的な言葉を並べて読者に遊びの余地を持たせても良いだろう。そのどちらも、140字小説としては正しい手法なのだ。

「制限」の美学

いわずもがな、これは「制限付きの文学」に類するものである。和歌や俳句などは文字数を決めてその中で表現をする。漢詩だって五言や七言といった字数の決まりがあるだろう。これを欧米に拡張してみても、頭韻とか脚韻とか、様々な制限を見ることができる。

「制限」からは美学が生まれる。俳句という世界を見てみれば、十七文字の中でどれだけ豊な表現ができるのかということに主眼があることが分かるだろう。不要な言葉を削り、できるだけ多くのことを伝えようとする。また、言葉にはしていないものを相手に伝わるようにする努力も必要だろう。あるいは、読み手の想像の余地を残すことも大事かもしれない。その基本構造は、140字小説でも同じである。

制限付きの文学は、字数という外的制限がある為に、その世界を自ずから内へと拡張するほか無い。その為に140字小説は多層性を帯び、濃密なものへと仕上がっていく。これが1000字も2000字もあったら飽きちゃうけれど、140字だったらおいしく食べられる。そんな世界を創り上げることが140字小説の目標なんじゃないかなと僕は考える。

この文章を煮詰めていくという作業は、必ずや長い物語を書くことになったときにも役に立つことだろう。文章生成の瞬発力、またその文章を吟味する力が身に付く。無間書房同人も、140字小説を通して力をつけ、また新しい作品を皆様のもとにお届けできるように努力いたす所存でございます。
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